『外食チェーンのうな丼チェック2026』今年の評価結果と総評

うなぎのプロ3名が評価する『外食チェーンのうな丼チェック2026』
今年美味しい「うな丼」はどの外食チェーン?

 毎年7月の食イベントとして日本で定着した「土用の丑の日」に向けて、鰻(うなぎ)業界と飲食業界として、より多くの人に「うな丼」や「うな重」といった鰻料理を、一年を通して気軽に食べてもらいたいという想いから『外食チェーンのうな丼チェック』は始まりました。物価高や水産資源の減少などの影響で、近年は鰻の値段が高騰したことで、若い世代を中心に鰻離れが進んでいると指摘されています。値段の高騰により、江戸時代に発明された最初の丼(どんぶり)とされている「うな丼」の若者離れを防ぐことも狙いにしています。

 大手外食チェーン店では鰻専門店と比べるとリーズナブルな価格帯で提供されており、土用の丑の日に「うなぎ」を食べてもらえるきっかけとなるよう「外食チェーンのうな丼チェック」の評価結果を毎年7月に公表しています。
 外食チェーンのうな丼チェック実行委員会(共催:恒健社 本部:東京練馬区)が事前審査で、全国規模の大手外食チェーンの中で美味しいと判断した「うな丼(うな重)」を選び、うなぎに携わるプロ複数名を評価員にして、ブラインドテスト(商品名・店舗名などを分からないように伏せた状態で試食を実施して、客観的な商品評価を行うテスト)を行いました。今年も評価員として鰻専門店の店主・料理長3名に集まって頂き、味と外観の比較チェックを行い、個々の評価員の採点を集計し、採点について協議も行い、結果を発表します。

 2020年から始まり、今年で第7回となりますが、毎回実行委員会で事前に評価会に出すべきうな丼を調べ、試食も行います。2026年夏の評価対象としたのは、外食チェーンの業態と店名(ブランド)としては、牛丼チェーンである『すき家』と『松屋』に『𠮷野家』、ファミリーレストランからは『ガスト』、持ち帰り弁当チェーンでは『キッチンオリジン』、回転寿司チェーンでは『くら寿司』、立ち食い蕎麦チェーンから『ゆで太郎』の7ブランドです。
 また昨年からは、ここ数年で半加工品の鰻を調理場で焼いて提供する鰻専門チェーンが店舗数を急激に増やしており、販売価格が最も安価なメニューだと外食チェーンと同じ1,000円台という価格帯であるため、鰻専門チェーンという枠で『鰻の成瀬』を評価対象として、評価会に出してみました。
 それぞれ同じ日の昼前後に実行委員会スタッフが手分けして、東京江東区のJR亀戸駅周辺の店舗へ出向き、店頭から持ち帰り(テイクアウト)を行い、亀戸神社前に店を構える鰻店『八べえ』を会場にして評価会を実施しました。

[画像1:外食チェーン8社の持ち帰り「うな丼」容器と、鰻蒲焼きのおもて面比較]

[画像1:外食チェーン8社の持ち帰り「うな丼」容器と、鰻蒲焼きのおもて面比較]

 今回も試食では8社の「うな丼」を会場に持ち込んだ後、A〜Hのアルファベットを記入した別容器に分け、社名が分からないようにして(ブラインドテスト)、鰻料理専門店で働くプロの3名が評価員となり、味についてそれぞれの評価員が実食し採点しました。
 外観チェックでも持ち帰り容器から店が予想される可能性があるため、それぞれの持ち帰り容器からご飯と蒲焼きを取り出し、実行委員会で用意したA〜Hの付箋を付けた無色透明容器に移し替えた後、外観審査を行いました。試食審査を先に行うのは、一部の外食チェーンのうな丼では通常の鰻専門店とは違う独特の切り方を採用しているため、外観審査を先に行ってしまうと、独特の切り方から外食チェーンの社名を判別出来る可能性が発生し、チェーン店を特定されてしまった後に試食審査を行うのはブラインドチェックの意義が下がってしまうと実行委員会では判断しているからです。

 評価会の進行は日本官能評価学会正会員で食生活ジャーナリストの会会員でもあり、これまで「外食チェーンのロハス度チェック」や「介護食弁当チェック」を行ってきた経験のある中西純一(恒健社書籍編集部編集長)が監査役を務めました。厳正で客観的な食べ比べが行われるように会場で立会いながら、中西がうな丼の小分けや重量測定を担当しました。

 今年の評価員は3名とも一昨年から3年続けて同じメンバーで構成されていましたが、今年はこれまでと比較すると、3名とも実食審査の採点では倍以上の時間をかけることになりました。

 実食審査と外観審査の終了後、監査役の中西を司会に、評価員3名による総合評価討論会(座談会)を行い、それぞれの評価を語ってもらいました。点数を集計している間に、各自感想や意見を出してもらいました。
 今年は3人の審査員は全員、過去の2年間よりも味の違いについて、点数として評価するのが最も難しかったと語りました。例年なら、上位グループと中位グループとでは、ある程度美味しさの違いが分かれていそうですが、今年は鰻蒲焼きでは、上位グループと下位グループはあったが、微妙な差であったという意見もありました。各社ともうな丼としての完成度が高くなっていて、企業側の開発力の高さがあるという感想もありました。

 実行委員会スタッフによる採点の結果が集計され、評価員にA〜Hの社名を明かして、それぞれの総合順位と点数を評価員に告げました。各社の順位について、異存が無いかについて全員で協議しました。今年は1位から4位までが接戦で、3位が同点であったことから、評価員ごとの点数や順位に、指標ごとの小計点数も見直しながら、最終順位は採点通りの結果とすることで、全員の了承を得られましたので、今年の順位を確定しました。

●評価会当日の取材をマイナビ学生の窓口がおこない、座談会のリアルな会話を詳しく掲載しています
https://gakumado.mynavi.jp/gmd/articles/80705

[画像2:実食審査と外観審査を行った評価員3名と、座談会の様子]

 今年の総合評価第1位となったのは牛めしチェーン『松屋』の「うな丼」でした。第2位に選ばれたのは持ち帰り弁当チェーンの『キッチンオリジン』の「うな重(中国産うなぎ)」、第3位は同点で牛丼チェーン『すき家』とファミリーレストランチェーン『ガスト』の「うな重」の2つとなりました。第5位については、採点結果表を御覧下さい。(画像3)

 評価員からは今年も、どの外食チェーンも大きいサイズのうなぎの蒲焼きをのせて、焼き目も入って、しっかりとしたうな丼の味付けに仕上げている点に関して、驚嘆と同時に鰻専門店からしてはウカウカしていられないとの評価が全員からあがりました。

 その中でも『松屋』に関しては、うなぎ蒲焼きの焼き色の良さ、味の良さが他社よりも高い点数が付けられたことに加え、ご飯と付けダレについての評価が最も高かったことが、第1位に選ばれた要因となりました。『松屋』の蒲焼きは商品説明文に記載があるように「松屋特製のタレをつけては焼いてを4度繰り返し、外はパリッと、中はふわっと、香ばしく焼き上げたうなぎ」というオリジナルの焼き工程での工夫によって、美しい焼き色がついて、タレの味が染み込んでいたことが、高評価に繋がったと思われます。
 『松屋』は昨年も第1位を獲得していましたが、うな丼の販売を再開した2022年以降では6月下旬から約1カ月間のみの期間限定の販売というスタイルをとっている関係か、毎年うな丼の味わいに違いがあり、それが成功する場合とそうでない場合がありました。昨年と今年は、タレに関しての味付けに変化がありました。3年前の味とも違うタレにしていましたが、2年続けて第1位という評価を獲得しました。期間限定販売ですから、もし『松屋』のうな丼に興味を持たれた方は、土用の丑の日を過ぎると食べられなくなる可能性がありますから、お早めに食べてみて下さい。

[画像3:外食チェーン2026年夏の鰻お得度評価と評価員の採点結果表]

 次に、第2位になった『キッチンオリジン』ですが、こちらも評価員全員から満遍なく鰻のふっくらした肉厚感ある外観と鰻蒲焼きの美味しさが高く評価され、「蒲焼き」の指標では第1位の『松屋』と同じ最高得点を獲得、「外観」では1点差という僅差でした。1位と点差が分けたのは「ご飯」についての評価で若干の差異があり、2位となりました。『キッチンオリジン』は、4年前からうな丼チェックの評価対象に入ってから、毎年着実に蒲焼きの品質とタレの味について改善を施し、少しずつ順位を上げてきており、今年の第2位は企業努力がうなぎのプロにも届いたと言えるでしょう。その進化したタレの味については、別途詳しく記載いたします。。

 同点で第3位となったのは『ガスト』です。うな丼チェックは7回開催していますが、その内3回は第1位を獲得し、1位でなくても2位にはなっていた『ガスト』は、評価員の評価が下がったというよりも、他社の味が向上したことで相対的に順位が下がったと考えるのが正しいと言えます。一昨年のうな丼チェックでは、評価員全員の総合評価で1位を獲得しており、昨年は「蒲焼き」の美味しさでは最高得点でした。単純に今年の『ガスト』のうな重だけを食べれば、昨年同様に4度焼きでふっくら柔らかな蒲焼きは、十分に美味しいと満足出来る味付けになっています。しかし、食べ比べによる評価では、どうしても他社との比較になってしまうため、他社の味が進化していると、相対的に点数が低くなってしまう傾向になります。

 今年の実食審査では評価員の採点では、例年よりも倍以上の時間が掛かったというのは、正に『ガスト』以外の他社の味が明らかに向上したことが要因となっていると思われます。つまり『ガスト』以外の各社の味が軒並みグレードアップしたことで、今年は正にうな丼戦国時代に突入したと言えるでしょう。

 第5位となった『𠮷野家』は、蒲焼きの味では一昨年や昨年よりも高い得点を獲得しています。特に、今年は蒲焼きの指標では、3番目に高い点数を獲得しており、ご飯でも3番目での得点と、うな重の味わいとしては上位グループに入っています。毎年の評価会総評で指摘していますが、『𠮷野家』のうな重では、蒲焼きが横と縦にもカットされ、縦長の蒲焼きを2カット盛り付けることから、どうしても外観の指標では最も低い点数となってしまうことから、順位も下がってしまっています。商品の均一性を担保する上で、細かくカットすることで、同じ重量やサイズの蒲焼きを提供するということを優先した判断だと思われますが、味わいに関しての点数は高いだけに、今後カット方法を改良すれば、更に高い順位になると思われます。
 第6位になった『くら寿司』ですが、蒲焼きの指標では2番目に高い点数となっています。昨年まではほぼ周年販売をしていたうな丼を、今年からは5月から販売を始め、昨年から重量はアップしながら価格は下げ、蒲焼きの味は変えてきました。通常の外食チェーンであれば、これだけ商品のグレードアップを実施したのであれば、大々的にリリースをするところですが、あくまでも推測ですが、業態としてはにぎり寿司を食べてもらうのが主軸ですから、サイドメニューとしての位置づけである丼物は、これだけグレードアップしても宣伝は控えているのだと思われます。総合点として低くなっているのはご飯の点数が他社より低かったためで、これは寿司用のご飯は、米粒も小さく、酢飯にして美味しい品質を選んでいるため、どうしても丼物のご飯として食べると相対的に低くなってしまうのが要因です。評価員からもくら寿司の蒲焼きを牛丼チェーンのご飯で食べれば美味しいだろうという意見もあり、今年の評価員の採点に時間が掛かった要因の一つに、くら寿司の蒲焼きが美味しかったことも挙げられるでしょう。

 今年のうな丼チェックでは評価員3名は、一昨年、昨年と同じメンバーであることは前述した通りです。うな丼チェックでは毎年なぜ評価員が3名いるのかを説明しますと、もし評価するのが一人だと、それは個人の嗜好を示しているだけに止まってしまうからです。美味しさの評価は人によって異なります。うなぎの業界に長く携わっている方々でも一人の評価では、個人の好き嫌いを表明しているに過ぎないと指摘を受けてしまうでしょう。個人の嗜好でも、複数人が採点を行うことで、客観性が高まり、より多くの人の好みに合致してくると言えます。無論、評価員の中に、味音痴の方が入ってしまうと、一般的な味の嗜好からズレてしまいます。現在の評価員は、これまでの採点でも個人個人での点数に違いは出ますが、おおよその順位に関しては、ほぼ同じ傾向を示していることから、評価員を継続して頂いています。つまり、審査対象になったうな丼に関して、各社とも味について進化させたり、変えずにおいても、評価員3名が行う採点はうな丼としての美味しさ・完成度という評価では客観的には、毎年相対順位は出せているのかと思っております。なお、評価員が採点する前に、評価について相談するというのは、エンターテインメントのメディアであれば行われていますが、世界的な食評価の世界では、個人個人は誰にも相談をせず、運営側からも意見は述べずに、自らの判断で採点を行います。日本のテレビ番組で審査員同士が祭典前にあーだこーだ話し合っているのが放送されているため、うな丼チェックではそういったエンターテインメントの手法は用いられていないことも書き記しておきます。

 ブラインドチェックで社名は分からないように実食審査を行っていますから、会社の名前や規模などの外的要素を排除している点では、他のメディアやサイト、YouTube動画作品での評価結果と異なっていたとしても、評価の手法はそれぞれが責任を持って行うものですから、外食うな丼チェック実行委員会としては特にコメントをするつもりはありません。
 採点結果に関しては過去の採点結果も、恒健社の下記のページで見ることが出来ますので、もしお時間のある方は、昨年や一昨年の採点結果も御覧下さい。

●2024年の結果と総評
https://gokensha.com/archives/1881

●2025年の結果と総評
https://gokensha.com/archives/2399

「うな丼(うな重)」をリーズナブルに、季節に関わらず食べて頂きたいという「外食チェーンのうな丼チェック」の趣旨を念頭において、どの外食チェーンのメニューが最もお得感が高いかについて、今年も計測を行いました。

 各社の鰻蒲焼きの重量を個別に電子秤で計測し、価格で割り、鰻お得度ランキングを作りました。鰻蒲焼き比率が最も高かったのは『キッチンオリジン』でした。『キッチンオリジン』の「うな重」は、蒲焼き1/3カットを1枚と、尻尾に近い部分の切り身を1切れの実質的には1.3カット相当の分量で、蒲焼きに大きさと厚みがあり、価格が1,079円(税込)という安さもあり、最もお得なうな丼となりました。蒲焼きの味の評価でも最高得点であったことを加味すると、今年最もお得で美味しく食べられるおすすめのうなぎ蒲焼きは『キッチンオリジン』と言えるでしょう。
 第2位は『𠮷野家』で、こちらは102gと大きさも厚みもある鰻蒲焼きでした。『𠮷野家』のうな丼は2023年から鰻蒲焼きが100g以上の重量となり、お得度評価ではこの5年間は1位か2位を獲得しており、外食チェーンでは最も食べ応えがあるうな重が食べられる店舗と言えます。
 『すき家』は鰻蒲焼きの重量が74gですが、価格が980円(税込)と、昨年は同じ価格に抑えたことで、お得度評価第3位を獲得しました。食材や物流費の値上げが続く中で、今年は販売価格を上げるチェーン店と、抑えるチェーンに分かれました。全体の傾向としては、値段を据え置いても、上げても重量をアップさせていく方向にあります。

 昨年は米の価格高騰という丼物では、味と価格に直結する問題が発生しました。うな丼も丼物の代表として、タレに合う美味しい白米と一緒に蒲焼きとタレを口に含んで咀嚼することで美味しさが増していく食べ物です。今年は米の価格が昨年よりも落ち着き、流通が滞るという事態も生じなくなり、外食チェーンのご飯の味も、昨年よりも美味しくなってきました。このことで、ご飯の味が全体の味を左右する丼物メニューであるうな丼も、コメの品質を上げたチェーンでは、昨年よりも丼としての美味しさがアップしたと言えるでしょう。

 もう一つのトレンドとしては、昨年から登場し始めたロストラータ種(学名:Anguilla rostrata、アメリカウナギ)鰻を使った蒲焼きの味の向上です。昨年の総評でも記載していますが、まだ昨年のロストラータ種鰻は、古来より日本で生息し食用として愛されてきたジャポニカ種(学名:Anguilla japonica、ニホンウナギ)とは、明らかに異なる味わいで、鰻のプロであれば直ぐに判別出来るくらい差がありました。しかし、ロストラータ種を使用していると表明した『𠮷野家』や『鰻の成瀬』の蒲焼きの採点は、昨年よりも上がっており、評価員も昨年だとどれがロストラータ種か判別出来たのが、今年は判別が難しかったと語っています。仕入れ価格ではロストラータ種はジャポニカ種よりも安価なため、食味が向上しているのであれば、更に他の外食チェーンでもロストラータ種の使用が出てくると思われます。

 そして、今年はタレの味付けに関して、新しい傾向がありました。『松屋』の別添えのタレ袋の裏面に記載のある原材料表示をみると、鰻のタレの原料として聞いたことがない名称が並んでいました。「かつお節エキス」「和風だし」「ガラスープの素」などです。これらは通常の鰻専門店の鰻のタレでは使用しない調味料です。なぜ、これらの調味料を使っているかについて考察すると、2つ理由が考えられます。一つは『松屋』では、今年もうな丼は単品として提供しながら、「ふわたまうな丼」として「ふわとろ玉子」を鰻蒲焼きと重ねて盛った丼メニューを売り出しています。卵焼きと鰻蒲焼きの組み合わせは、滋賀県発祥で「きんし丼」があり、卵焼き或いは錦糸卵を鰻蒲焼きと合わせ、相性が良いことは証明済みの丼物メニューです。『松屋』で提供している「ふわたまうな丼」で使うタレとして考えると、「かつお節エキス」「和風だし」「ガラスープの素」は卵にかけると、うま味が増す組み合わせであることは、日本料理に関わる人なら容易に導き出せる。『すき家』がうな丼に牛丼を合わせた「うな牛」を人気メニューにしたように、『松屋』は卵焼きを合わせることで「ふわたまうな丼(きんし丼)」を人気メニューにして、新たな顧客を掘り起こそうとしていると考えられます。

 そして、もう一つの理由としては、うな丼としての進化を狙ったのではないだろうか。若い男性が主体の顧客である牛丼チェーンでは、新しい味付けの丼物メニューを開発していく必要がある。いつも同じ味付けの丼もありながら、ライバルチェーンでは味わえない丼物メニューも求められています。そこで、うな丼では後発に当たる『松屋』としては、従来のうな丼よりも、うま味が多く、ボリュームもあるうな丼にチャレンジしたいと考え、ボリュームは卵焼きでアップさせ、かつお節エキス等でうま味を増し、鰻特有の香りを減らして、若い男性層に食べてもらいやすくしたと考えられる。

 トレンドとしては、鰻専門店のうな丼に近づけようとする指向性も入ってくる。例えば『オリジン』のタレ袋の裏面の原材料表示を見ると「うなぎの骨」と記載があります。鰻専門店でも鰻らしい味わいを出すために、捌いた後に残る鰻の骨を、店によっては鰻のタレを仕込む際に入れます。これは鰻の骨に含まれる成分が、鰻蒲焼き特有の香りをだすためで、他社で鰻の骨をタレに入れているチェーンはないが、より鰻専門店の味わいや香りに近づけるための手法として『オリジン』では「うなぎの骨」を敢えてタレに含ませていると考えて間違いないだろう。
 奇しくも、鰻のタレにこれまでを上回るうま味を出すために「鰹節味」「鶏ガラ味」を付け加えた松屋が最終評価で1位になり、専門店の鰻の蒲焼きに近づけようとしたオリジンが第2位になっていることを鑑みると、多様化している日本の飲食文化に新しいチャレンジを行ったことが、両社の評価が他社よりも高かったのとも考えられる。

[画像4:採点1位の「松屋」(上)と、2位の「オリジン」(下)、右がタレ袋]

 昨年からは近年急増している、鰻専門の飲食チェーンのうな丼(うな重)についても1,000円台で食べられることから、今年も「外食チェーンのうな丼チェック」で評価対象に加えました。審査対象に選んだのは4年前に1号店を開店してから昨年には最大400店舗程まで拡大し、今年夏の時点で230店舗程を全国展開している『鰻の成瀬』チェーンです。

 評価方法は外食チェーンと同じ指標と点数配分で行いました。また、試食と外観審査も外食チェーンの7社に鰻専門チェーン1社を分からないようにして、ブラインドテストを行いました。ただし、鰻専門チェーンは外食チェーンと比べると、店舗で鰻蒲焼きを焼く(スチームコンベクション使用)という調理工程が入りますから、タレを付けて脂の乗った鰻を焼くという現象によってメイラード反応が起こり、鰻蒲焼きに香ばしさと新たなうま味が生まれることから、店舗では焼きを行わない外食チェーンと鰻専門チェーンのうな丼は、分けて評価・総評するのが公平であると実行委員会では判断し、採点結果は鰻専門チェーンは、外食チェーンとは分けて作成しました。
 また実食審査の対象にしたのは『鰻の成瀬』のうな重で「並の梅」、1,600円のメニューでした。評価会は6月23日[火]に実施しましたが、7月1日より『うなぎの成瀬』では大幅なメニュー改定が行われ、従来の「特上(国産ジャポニカ種)」と「並(中国産ロストラータ種)」は廃止となり、「上(中国産ジャポニカ種)」のみの販売となりました。よって、今年は味の評価は行いましたが、既に『鰻の成瀬』では注文できないメニューとなっており、あくまでも評価結果は参考値という位置づけで御覧頂ければと考えております。

『鰻の成瀬』では現状は食べられませんが、近年増加しているスチームコンベクションを使用して店舗で焼き目を付ける鰻専門チェーンでは、中国産ロストラータ種の蒲焼きをメニューに取り入れており、今回のブラインドチェックではロストラータ種でもジャポニカ種に近い点数が出るようになったことは、重要な話題かと思います。
 今後、鰻専門チェーンでは様々な試みがなされると思われ、外食チェーンのうな丼チェック実行委員会ではうな丼の可能性や将来性、食文化の継承を視野に入れ、産地や種類のバリエーションにはこだわらずに、手頃な価格で食べられるうな丼については、ブラインドテストをおこなっていければと考えています。特に、今年から一般向けに限定量とは言え販売が始まった完全人工養殖鰻の蒲焼きについては、注目して行きます。

[画像5:鰻専門チェーン2026年夏の鰻お得度評価と評価員の採点結果表]

 昨年と同じ結果になるかと思いきや、今年も外食チェーン各社の思惑や戦略が入り交じりながら、昨年とは味を進化させた『松屋』が今年も1位となり、2位以下は前年とは異なるランキングとなりました。

 鰻の美味しさは一般の人には区別が付きにくい食事です。複数名の鰻のプロが評価員となって、ブラインドテストでうな丼の味を採点化するという方法は、公平性や客観性という点で優れていると考えられます。さらに、外食チェーン各社のうな丼への取り組みが毎年進化しており、一般消費者では鰻専門店との味の違いが分からないくらいのレベルまで高くなってきているとも言えます。鰻蒲焼きやタレの味は好みが各人にありますし、利便性の高い店舗という条件もありますから、あくまでも「外食チェーンのうな丼チェック」の評価結果は参考程度に、皆様のお好みの味を見つけて、土用の丑の日を楽しんでください。

 なお、土用の丑の日は多くの人が鰻を買い求めるため、鰻専門店でも外食チェーンでもうな丼の販売が集中しています。美味しいうな丼を食べたいとお考えであれば、専門店ではうな丼のメニュー(梅竹松などのグレードを含め)を決めて、お店に数日前には予約することをお薦めします。
 また、外食チェーンでも土用の丑の日に限れば、うな丼は前日までにスマホ等でアプリ予約しておくことをお薦めします。外食チェーンでは土用の丑の日の当日受け取りであれば、アプリを使った事前予約を行うと、割引クーポンが使えることもあり、お得な価格で食べられたりするメリットもあります。

 天然の鰻でも養殖の鰻でも、身に脂が乗って美味しくなるのは秋から冬にかけてです。外食チェーンでは、一年を通してうな丼(うな重)をメニューとして提供しているチェーン店もあります。土用の丑の日だけでなく、ぜひ一年を通してうな丼を食べていただき、和食文化の代表ともいえる丼の始まりとされるうな丼を老若男女に味わって頂き、鰻の生い立ちや生育環境についても関心を持って頂ければ幸いです。

 外食チェーンのうな丼チェック実行委員会では恒健社などメディア関係者にも協力いただきながら、限りある食資源を無駄なく、供給体制を見越した無理のない消費行動の情報提供を行いながら、飲食店と消費者を繋ぐ役割を担っていければと考えております。
 外食うな丼チェック実行委員会では、評価会の様子をスマホで動画も撮影しました。写真と合わせて短い動画作品を制作しています。映画予告編風に作られた作品で、恒健社のYouTubeチャンネルで公開していますから、もし宜しければこの動画もぜひ御覧下さい。

●恒健社YouTubeチャンネル

GOKENSHA【恒健社】新しい発想の出版社 - YouTube

新しい時代のディストリビューションを使って、斬新な発想で書籍を企画編集する出版社。 プリントオンデマンド(POD)と電子書籍に特化した出版物を、オリジナルの出版コ…

○ショート動画では審査の難しさを解説しています。

なお、2027年夏の土用の丑の日は、7月26日[月]と8月7日[土]です。1年で2回土用の丑の日が来る年回りになっていますから、ぜひ月曜日は勤め先の親しい方々で、土曜日はご家族で鰻を食べに行かれてはどうでしょう。来年も評価会の結果と総評は、土用の丑の日の数日前に発表する予定です。

<評価会実施日> 2026年6月23日[火] 曇り

<調査対象とした外食チェーン5業態、7社(ブランド)と購入店舗>

[回転寿司チェーン]くら寿司(小岩駅前店)

[牛丼チェーン]すき家(亀戸駅北口店)│松屋(亀戸店)│𠮷野家(亀戸駅前店)

[ファミリーレストランチェーン] ガスト(亀戸店)

[持ち帰り弁当チェーン] キッチンオリジン(亀戸東口店)

[立ち食い蕎麦チェーン] ゆで太郎(小岩北口店)

<調査対象とした鰻専門チェーン1社の購入店舗>
 鰻の成瀬(小岩店)

<評価会の概要>

■評価会の進行

[1]対象商品は同じ店で同じ日時に購入した品を小分けして食べる

[2]試食している時は、評価員同士の会話や感嘆の声は禁止

[3]評価員にはどこの会社(ブランド)の丼を食べているかは分からないようにする

[4]試食する鰻蒲焼きの部位は各社とも条件を同じくするため、頭から胴の部位に揃える(尾に近い部分は外す)

■評価分類と評価項目

【指標1:外観評価】

 見た目の美味しさ、焼き具合、切り身の取り方

【指標2:蒲焼き評価】

 鰻の食感、香り、味付け(甘辛さ)、美味しさ感・満足感

【指標3:ご飯とタレ】

 ご飯の美味しさ、タレの味付け・蒲焼とタレとの相性、薬味(山椒)の美味しさ

■評価員による総合評価討論会

■評価員のプロフィール紹介
●評価委員長

東京都江東区・亀戸『八べえ』 二代目 山﨑 裕八

亀戸神社前に店を構える鰻店二代目店主、鰻の世界に入って27年

八べえ | 創業四十余年 亀戸天神前

亀戸天神前の鰻屋、八べえです。多様なニホンウナギを取り扱っております。他にも、ダチョウ、ラクダ、カンガルーなど珍しいお肉も!

●評価員

東京都文京区・春日『わたべ』 渡部 善隆

https://unagiyawatabe.com

横浜市鶴見区・駒岡『鰻々亭』 長谷川 みゆき

https://r.goope.jp/manmantei

[画像6:評価員3名、渡部善隆(左)、山﨑裕八(中央)、長谷川みゆき(右)]

●実行委員会が監修してマイナビ学生の窓口の「ガクラボ」所属の大学生3名が2026年夏に実施しました牛丼チェーン3社のうな丼食べ比べも、食のブラインドテストとして参考になりますから、ぜひ御覧下さい。
https://gakumado.mynavi.jp/gmd/articles/89640