『外食チェーンのうな丼チェック2025』今年の評価結果と総評

うなぎのプロが評価する『外食チェーンのうな丼チェック2025』
今年美味しい「うな丼」はどの外食チェーン?

 毎年7月の食イベントとして日本で定着した「土用の丑の日」に向けて、鰻(うなぎ)業界と飲食業界として、より多くの人に「うな丼」や「うな重」といった鰻料理を、一年を通して気軽に食べてもらいたいという想いから始まりました。物価高や水産資源の減少などの影響で、近年は鰻の値段が高騰したことで、若い世代を中心に鰻離れが進んでいると指摘されています。値段の高騰により、江戸時代に発明された最初の丼(どんぶり)とされている「うな丼」の若者離れを防ぐことも狙いにしています。大手外食チェーン店では鰻専門店と比べるとリーズナブルな価格帯で提供されており、土用の丑の日に、気軽に「うなぎ」を楽しんで食べてもらえるきっかけとなるよう「外食チェーンのうな丼チェック」は毎年夏に実施しています。

 外食チェーンのうな丼チェック実行委員会(共催:恒健社 本部:東京練馬区)が事前審査で、全国規模の大手外食チェーンの中で美味しいと判断した「うな丼(うな重)」を選び、うなぎに携わるプロを評価員にしてブラインドテスト(商品名・店舗名などを分からないように伏せた状態で試食を実施して、客観的な商品評価を行うテスト)を行いました。今年も評価員として鰻専門店の店主・料理長3名に集まって頂き、味と外観の比較チェックを行い、個々の評価員の採点を集計し、採点について協議も行い、結果を発表します。

 2020年から始まり、今年で第6回となります。2025年夏の評価対象としたのは、日本最大手の外食チェーンからは、回転寿司チェーンでは『くら寿司』、牛丼チェーンである『すき家』と『松屋』に『吉野家』、ファミリーレストランからは『ガスト』、持ち帰り弁当チェーンでは『キッチンオリジン』の6社(ブランド)です。

 また今年からは、この数年で鰻を調理場で焼いて提供する鰻専門チェーンが店舗数を急激に増やしており、販売価格が最も安価なメニューだと外食チェーンと同じ1,000円台という価格帯であるため、鰻専門チェーンという枠で『宇奈とと』『鰻の成瀬』を初めて評価対象として、実験的に評価してみました。それぞれ同じ日の昼前後に実行委員会スタッフが手分けして、東京江東区のJR亀戸駅周辺の店舗へ出向き、店頭から持ち帰り(テイクアウト)を行い、亀戸神社前に店を構える鰻店『八べえ』を会場にして評価会を実施しました。

[画像1:外食チェーン6社の持ち帰り「うな丼」容器と、鰻蒲焼きのおもて面比較]

 今回も試食では8社の「うな丼」を会場に持ち込んだ後、A〜Hのアルファベットを記入した別容器に分け、社名が分からないようにして(ブラインドテスト)、鰻料理専門店で働くプロの3名が評価員となり、味についてそれぞれの評価員が実食し、採点しました。

 外観チェックでも持ち帰り容器から店が予想される可能性があるため、それぞれの持ち帰り容器からご飯と蒲焼きを取り出し、実行委員会で用意したA〜Hの付箋を付けた無色透明容器に移し替えた後、外観審査を行いました。試食審査を先に行うのは、一部の外食チェーンのうな丼では通常の鰻専門店とは違う独特の切り方を採用しているため、外観審査を先に行ってしまうと、独特の切り方から外食チェーンの社名を判別出来る可能性が発生し、チェーン店を特定されてしまった後に試食審査を行うのはブラインドチェックの意義が下がってしまうと実行委員会では判断しているからです。

 評価会の進行は日本評価学会正会員で食生活ジャーナリストの会会員でもあり、これまで「外食チェーンのロハス度チェック」や「介護食弁当チェック」を行ってきた経験のある中西純一(恒健社書籍編集部編集長)が監査役を務めました。厳正で客観的な食べ比べが行われるように会場で立会いながら、中西がうな丼の小分けや重量測定を担当しました。

 実食審査と外観審査の終了後、監査役の中西を司会に、評価員3名による総合評価討論会(座談会)を行い、それぞれの評価を語ってもらいました。今年の評価員は3名とも同じメンバーで構成されていましたが、点数を集計している間に、各自感想や意見を出してもらいました。昨年よりも各社の違いの優越を付けるのが難しかったという意見が複数出ました。また、今年は鰻の香りや脂ののり具合で、上位グループと下位グループがあったという感想もありました。各社ともご飯やタレを含めて、うな丼の研究を継続して行われているとの指摘もありました。

 実行委員会スタッフによる採点の結果が集計され、評価員にA〜Hの社名を明かして、それぞれの総合順位と点数を告げました。各社の順位について、異存が無いかについて全員で協議しました。特に今年は1位と2位はわずか2点差でしかないことから、個別の順位や点数、指標ごとの点数も見直しながら、最終順位は採点通りの結果とすることで、全員の了承を得られましたので、今年の順位を確定しました。

●評価会当日の取材をマイナビ学生の窓口がおこない、座談会のリアルな会話を詳しく掲載しています
https://gakumado.mynavi.jp/gmd/categories/campuslife/cplgourmet

[画像2:外観チェックと実食チェックを行った評価員3名と、座談会の様子]

 今年の総合評価第1位となったのは牛めしチェーン『松屋』の「うな丼」でした。第2位に選ばれたのはファミリーレストランチェーン『ガスト』の「うな重」、第3位は持ち帰り弁当チェーンの『キッチンオリジン』の「うな重」でした。第4位は牛丼チェーン『すき家』で、以下牛丼チェーンの『𠮷野家』の「鰻重」、回転寿司チェーンの『くら寿司』の「うな丼」となりました。(画像3)

 評価員からは、どの外食チェーンも1000円台でこれだけ大きいサイズのうなぎの蒲焼きをのせて1000円台でうな丼として提供し、しっかりとしたうな丼独特のタレの味付けに仕上げている点に関して賞賛と同時に、鰻専門店からしても驚きの完成度であることを全員が評価していました。

 その中でも『松屋』に関しては、うなぎ蒲焼きの焼き色の良さとタレの味の良さが他社よりも高い点数が付けられたことが第1位に選ばれた要因となりました。『松屋』の蒲焼きは商品説明文に記載があるように「松屋特製のタレをつけては焼いてを4度繰り返し、外はパリッと、中はふわっと、香ばしく焼き上げたうなぎ」というオリジナルの焼き工程での工夫によって、美しい焼き色がついて、タレの味が染み込んでいたことが、高評価に繋がったと思われます。
 『松屋』は一昨年に第1位を獲得していましたが、昨年は外観やご飯を含めて評価が下がり順位を下げてしまいましたが、今年は第1位に返り咲きました。『松屋』側に確認はしておらず、味だけでの推測ですが、今年のうな丼は一昨年の味付けに戻したのではないかと思うくらい、一昨年と同じように評価員全員から高得点を獲得しました。

外食うな丼チェック2025_外食チェーン6社採点結果表_0710-最適化済

 次に、第2位になった『ガスト』ですが、点数としては昨年よりも高い点数を獲得していました。残念ながら『松屋』が『ガスト』を上回る点数、それも240点満点で僅か2点(100点満点で換算すると1点)という外食チェーンのうな丼チェックはじまって以来の僅差での第2位でした。『ガスト』は昨年と同様の美味しさを保っていることは点数からもお分かり頂けますし、評価員の採点でも1名はガストを1位にしていました。しかし、他の2名は『松屋』の点数の方が高かったことで座談会でも熱のこもった議論をして同時1位という選択もありましたが、『松屋』を1位として、『ガスト』を2位としました。
 『ガスト』は昨年から4度焼きの工程で「炭焼き」が入り、「焼き加減」が他社よりも強めになっていることは、蒲焼きのおもて面の焼き具合を見ても、今年も他社よりもしっかりした焼き色になっていることが分かり(画像1)、これがタレと相まって蒲焼きの美味しさで他社を上回る結果となったと思われます。

 第3位になった『キッチンオリジン』ですが、こちらも評価員全員から満遍なく鰻のふっくらした肉厚感ある外観と鰻蒲焼きの美味しさが高く評価されました。『キッチンオリジン』は、ご飯とタレの指標に注目すると、6社の中で第一位となっており、弁当チェーンとしての持ち帰りを前提とした米の味と、米の炊き方の良さ、ご飯とタレの相性が他社よりも優れていたことが認められます。
 第4位の『すき家』は一昨年以来、鰻蒲焼きの大きさがしっかりあり、外観を含め、ご飯とタレも得点を獲得しました。順位では4位となっていますが、点数では161点という点数は3年前の外食うな丼チェックでは第1位の点数です。つまり『すき家』のうな丼は一昨年から平均以上の点数を獲っているものの、他社がそれを上回るような改善や改良を行ってきたことで、点数はほぼ同じであるにも関わらず、相対的に順位は下がってしまったという解釈が正しいと言えるでしょう。

 第5位となった『𠮷野家』も総点数でも蒲焼きの味でも昨年よりも高得点なのですが、他社の点数がそれを上回ったことで順位は下げてしまっています。外食うな丼チェックを始めて以来、外食チェーンのうな丼で指摘していることですが、日本人が考える鰻の蒲焼きは、1尾の鰻を頭と尻尾の中間で半分カットする、或いは3つにカットにして提供することでうな丼として認識されます。1尾の鰻を半分(或いは1/3)にカットしてから、更に縦にカットして、通常の半分の切り身を2つ合わせて提供していますが、このカット方法によって外観審査で点数を低くしてしまっています。『𠮷野家』の蒲焼きそのものは他社に比べて肉厚であるにも関わらず、切り身が細かくなっていることで、評価が低くなってしまっていますから、切り身の取り方を通常の鰻蒲焼きと同じようにすれば、他社に負けない点数になると思われます。あくまでも想像ですが、鰻は同じ大きさでも重さも違ってくるため、チェーンとして全国どこでも、いつ食べても同じ分量の蒲焼きを提供することを優先させるため、1尾の鰻蒲焼きから4〜6カットに切り分け、蒲焼きの重量を揃えるようにしているのだと思われます。これによって蒲焼きの調理ロスを減らすこともできますから、食材の無駄を減らす企業姿勢を表しているのかもしれません。
 第6位になった『くら寿司』にも鰻のカット方法が一般的な鰻蒲焼きと違うことで、採点結果が低くなってしまったと解釈出来ます。今年から鰻を横に細かくカットして、切り身を2カット盛り付けていますが、この切り方ではうな丼らしさ、つまり食欲をそそる蒲焼きには見えないという評価になったと思います。このカット方法だと、鰻の蒲焼きを無駄なく使えるという食材ロスの解決には結びつきますから、消費者側ももしかしたら、価格の安いうな丼ではこういう細かくカットした切り身も許容するような社会共通の認識も必要なのかも知れません。『くら寿司』は毎年他社よりも200円以上安い価格でうな丼を提供している良心的な価格設定が魅力であり、無添加というキーワードと共に引き続きうな丼の味と安心には期待していきたいです。

 今年のうな丼チェックでは評価員3名は、昨年と同じメンバーであることは前述した通りですが、昨年の採点結果と今年の結果を比べてみて面白いことに気がつきました。あくまでも予測でしかないですが、昨年上位を獲得した『ガスト』『キッチンオリジン』『すき家』は、今年も同じ製法で、ほぼ同じ味付けで提供したと考えています。昨年と変わらない味に対して、今年の評価員の採点結果がこの3社では今年もほぼ同じ点数となっていたことです。何を言いたいのかと簡潔に説明しますと、ブラインドチェックで1年という期間を空けて実施したにも関わらず、同じ味付けのうな丼に関してはほぼ同じ点数となったことは、今回参加してもらった評価員のうな丼に対しての評価がブラインドチェックでもブレていないことを証明したことになります。
 参考までに昨年の採点結果は、恒健社の下記のページで見ることが出来ますので、もしお時間のある方は、昨年の採点結果も御覧下さい。
https://gokensha.com/archives/1881

「うな丼(うな重)」をリーズナブルに、季節に関わらず食べて頂きたいという「外食チェーンのうな丼チェック」の趣旨を念頭において、どの外食チェーンのメニューが最もお得感が高いかについて、今年も計測を行いました。

 各社の鰻蒲焼きの重量を個別に電子秤で計測し、価格で割り、鰻お得度ランキングを作りました。鰻蒲焼き比率が最も高かったのは『松屋』でした。『松屋』の「うな丼」は、鰻蒲焼きが半身を1枚、しっかりとした大きさと厚みがあり、価格が980円という安さもあり、最もお得なうな丼となりました。
 第2位は『𠮷野家』で、こちらは108gと大きさも厚みもある鰻蒲焼きでした。『𠮷野家』のうな丼は2023年から鰻蒲焼きが100g以上の重量となり、お得度評価ではこの3年間は1位か2位を獲得しており、外食チェーンでは最も食べ応えがあるうな重が食べられる店舗と言えます。
 『キッチンオリジン』も鰻蒲焼きの重量が100gを超えており、昨年はお得度評価第1位を獲得していましたが、今年は販売価格が上がったことで第3位となりました。今年は諸物価高騰という社会的な要因によってうな丼の価格が昨年よりも2割強値上げをしたところもあり、お得度評価の結果に影響を及ぼしたと考えられます。

[画像3:評価員による座談会。中央上が『松屋』のうな丼]

 今年は米の価格高騰という丼物では、味と価格に直結する問題が発生しました。うな丼も丼物の代表として、タレに合う美味しい白米と一緒に蒲焼きとタレを口に含んで咀嚼することで美味しさが増していく食べ物です。
 米の価格高騰という問題に対して、外食チェーン各社では米国産米を導入するなどの対策を行い、価格と味の維持を保つ努力をしています。外食チェーンのうな丼チェックでは毎年、各社のうな丼での蒲焼きの重量を計測すると共に、ご飯の重量も確認してきましたが、昨年よりも重量を減らすようなことは各社とも行っていませんでした。ただ、昨年からの人件費の高騰や光熱費の上昇もあり、うな丼の販売価格は数10円から200円強の値上がりがありました。外食チェーンでのうな丼の販売価格は、安い店でも900円台となり、業態を問わず普通盛りでおおよそ1100円〜1500円の価格帯になってきたことが今年のトレンドと言えそうです。

 もう一つのトレンドとしては、味付けした冷凍加工鰻を店舗で解凍した後に、調理場で焼いて提供する鰻専門チェーンが急激に増えてきたことです。これまでうな丼を食べるのであれば、大きく分けて生きている鰻を店で包丁で捌いてから焼いて提供する専門店か、外食チェーンのどちらかでしたが、新たに鰻専門チェーンという選択が生まれてきました。

 国内での鰻の稚魚の漁獲量が減り続ける傾向にあるため、生きている鰻の販売価格が上昇していくことで、鰻専門店のうな丼価格も段々と上がり続けていくなか、冷凍加工鰻を使うことで専門店よりも安価な価格でうな丼を提供する鰻専門チェーンは3年程前からフランチャイズ方式で店舗を全国に急激に増やして行きました。鰻業界と飲食業界の働き手不足という状況は今後も継続していくのは間違いないため、鰻専門の調理人を雇用しなくても良い鰻専門チェーンは、消費者の新しい選択としても定着していき、海外にも広まっていくと思われます。

[写真4:外食チェーン6社の蒲焼きの皮面側]

 近年になってうな丼/うな重が1,000円台から食べられる、鰻専門の飲食チェーンが店舗数を増やし、多くの人から味についての関心が集まっています。価格帯から考えると、これら鰻専門チェーンのうな丼/うな重についても、外食チェーンと価格帯が重なってきていることから「外食チェーンのうな丼チェック」で評価してほしいという要望もあり、今年から実験的に同じ審査方法で評価することにしました。
 鰻専門チェーンから審査対象に選んだのは関東を中心に店舗展開している『宇奈とと』、3年前に1号店を開店してから今年夏の時点で300店舗までチェーン展開している『鰻の成瀬』の2社(ブランド)です。

 評価方法は外食チェーンと同じ指標と点数配分で行いました。また、試食と外観審査も外食チェーンの6社に鰻専門チェーン2社を分からないようにして、ブラインドテストを行いました。
 採点結果は鰻専門チェーン2社を比較しやすいように外食チェーンとは分けて作成しました。評価員の採点では『宇奈とと』が『鰻の成瀬』を上回る結果となりました。また、お得度評価でも『宇奈とと』が高い得点を獲得しました。
鰻専門チェーンは外食チェーンと比べると、店舗で鰻蒲焼きを焼くという調理工程が入りますから、タレを付けて脂の乗った鰻を焼くという現象によってメイラード反応がおこり、鰻蒲焼きに香ばしさと新たなうま味が生まれることから、店舗では焼きを行わない外食チェーンと鰻専門チェーンのうな丼は、分けて評価・総評するのが公平であると実行委員会では判断しました。
 実際に今回は実験的に外食チェーン6社と同時に鰻専門チェーン2社のうな丼を評価員に試食審査してもらいましたが、炭火で焼いている鰻蒲焼きは、明らかに炭火で焼いた香りが口に広がり、評価員には口にしただけで判別が付いてしまったことを、座談会の時に教えてもらいました。これまでの外食チェーンでは試食審査の時点で社名を当てられることはありませんでしたから、試食審査で社名が分かってしまったということは、外食チェーンと鰻専門チェーンは試食を分けて行う必要があったかと考えています。或いは、炭火焼きのうな丼を複数用意するなど、ブラインドにする目的が達成できるような手法を取り入れる等の対策を検討しておくべきであったと実行委員会では反省をしております。
 今年は実験的に鰻専門チェーンの評価は行いましたが、必ずしもブラインドテストにならなかったという理由から、あくまでも今回の鰻専門チェーンの評価結果は参考値という位置づけで御覧頂ければと考えております。

外食うな丼チェック2025_専門チェーン採点結果表_0710-最適化済

 座談会でも話題に上りましたが、鰻専門チェーンは店舗で焼いていることで、外食チェーンの味よりも鰻専門店の味に近い味や食感となっていて、一般消費者では専門店のうな丼と区別が付かないかもしれないという意見が交わされました。
 さらに、鰻専門チェーンのうな丼は、蒲焼きの大きさや切り方の見栄えが良く、『鰻の成瀬』ではテイクアウト用の容器も鰻の専門チェーンらしい格子柄がエンボス加工された黒の横長というプレミアム感のある容器を使っていたりして、専門店も参考にするべき要素があるという発言もありました。

 今回『宇奈とと』と『鰻の成瀬』では、外食チェーンのうな丼と近い価格帯ということで、両社とも最も安いうな丼を購入しましたが、例えば『鰻の成瀬』では「特上」「上」「並」と3つのグレードがあり、これは鰻の養殖や種類の違いによって分けられています。「特上」は国内で養殖されたジャポニカ種(学名:Anguilla japonica、ニホンウナギ)で、「上」は中国で養殖されたジャポニカ種、「並」は国名は明かしてくれなかったが海外で養殖されたロストラータ種(学名:Anguilla rostrata、アメリカウナギ)であることは店舗で丁寧に教えてくれました。これまで日本では国内で捕獲出来るジャポニカ種しか食べて来ませんでしたが(20年前は中国で養殖されたヨーロッパ種の鰻を輸入していた時期もあった)、ジャポニカ種の鰻が稚魚の漁獲量が激減していることで価格が高騰し続けていることから、将来的には異なる種類の鰻を輸入して食べるようになると考えられます。数年前に鰻の取引価格が急上昇した際に、一部の外食チェーンでロストラータ種の蒲焼きを使い始めましたが、その当時はまだロストラータ種の味にはクセが強くて、一年で消えてしまいました。ロストラータ種も年々養殖技術が向上して、味が良くなっているそうで、中国では養殖量は年々増え、中国国内では消費もされているようです。
 今後、鰻専門チェーンでは専門チェーンとして様々な試みがなされると思われ、外食チェーンのうな丼チェック実行委員会では来年は鰻専門チェーンという枠を別途設定して、うな丼の可能性や将来性、食文化の継承を視野に入れ、産地や種類のバリエーションにはこだわらずに、手頃な価格で食べられるうな丼については、ブラインドテストをおこなっていければと考えています。

[画像5:鰻専門チェーン2社のうなぎの蒲焼き、おもて面と皮面]

 昨年と同じ結果になるかと思いきや、今年も外食チェーン各社の思惑や戦略が入り交じりながら、昨年とは味を変えてきた外食チェーンが1位に返り咲くという、前年とは異なるランキングとなりました。

 鰻の美味しさは一般の人には区別が付きにくい食事です。複数名の鰻のプロが評価員となって、ブラインドテストでうな丼の味を採点化するという方法は、公平性や客観性という点で優れていると考えられます。さらに、外食チェーン各社のうな丼への取り組みが毎年進化しており、一般消費者では鰻専門店との味の違いが分からないくらいのレベルまで高くなってきているとも言えます。鰻蒲焼きやタレの味は好みが各人にありますし、利便性の高い店舗という条件もありますから、あくまでも「外食チェーンのうな丼チェック」の評価結果は参考程度に、皆様のお好みの味を見つけて、土用の丑の日を楽しんでください。

 なお、土用の丑の日は多くの人が鰻を買い求めるため、鰻専門店でも外食チェーンでもうな丼の販売が集中しています。美味しいうな丼を食べたいとお考えであれば、専門店ではうな丼のメニュー(梅竹松などのグレードを含め)を決めて、お店に数日前には予約することをお薦めします。
 また、外食チェーンでも土用の丑の日に限れば、うな丼は前日までにスマホ等でアプリ予約しておくことをお薦めします。外食チェーンでは土用の丑の日の当日受け取りであれば、アプリを使った事前予約を行うと、割引クーポンが使えることもあり、お得な価格で食べられたりするメリットもあります。

 天然の鰻でも養殖の鰻でも、身に脂が乗って美味しくなるのは秋から冬にかけてです。外食チェーンでは、一年を通してうな丼(うな重)をメニューとして提供しているチェーン店もあります。土用の丑の日だけでなく、ぜひ一年を通してうな丼を食べていただき、和食文化の代表ともいえる丼の始まりとされるうな丼を老若男女に味わって頂き、鰻の生い立ちや生育環境についても関心を持って頂ければ幸いです。

 外食チェーンのうな丼チェック実行委員会では恒健社などメディア関係者にも協力いただきながら、限りある食資源を無駄なく、供給体制を見越した無理のない消費行動の情報提供を行いながら、飲食店と消費者を繋ぐ役割を担っていければと考えております。


 外食うな丼チェック実行委員会では、評価会の様子をスマホで動画も撮影しましたので、写真と合わせて短い動画作品を制作していきます(近日公開予定)。恒健社のYouTubeチャンネルで公開していますから、もし宜しければこの動画もぜひ御覧下さい。

●恒健社YouTubeチャンネル

https://youtu.be/CbYhppCAX84

なお、2026年夏の土用の丑の日は、7月26日[日]です。日曜日になっていますから、ご家族で鰻を食べに行く機会となるでしょう。来年も評価会の結果と総評は、土用の丑の日の数日前に発表する予定です。


<評価会実施日> 2025年6月24日[火] 曇り

<調査対象とした外食チェーン6社(ブランド)と購入店舗>

[回転寿司チェーン]くら寿司(小岩駅前店)

[牛丼チェーン]すき家(亀戸駅北口店)│松屋(亀戸店)│吉野家(亀戸駅前店)

[ファミリーレストランチェーン] ガスト(亀戸店)

[持ち帰り弁当チェーン] キッチンオリジン(亀戸東口店)

<調査対象とした鰻専門チェーン2社の購入店舗>
 名代宇奈とと(錦糸町店)
 鰻の成瀬(亀戸店)


<評価会の概要>

■評価会の進行

[1]対象商品は同じ店で同じ日時に購入した品を小分けして食べる

[2]試食している時は、評価員同士の会話や感嘆の声は禁止

[3]評価員にはどこの会社(ブランド)の丼を食べているかは分からないようにする

[4]試食する鰻蒲焼きの部位は各社とも条件を同じくするため、頭から胴の部位に揃える(尾に近い部分は外す)

■評価分類と評価項目

【指標1:外観評価】

 見た目の美味しさ、焼き具合、切り身の取り方

【指標2:蒲焼き評価】

 鰻の食感、香り、味付け(甘辛さ)、美味しさ感・満足感

【指標3:ご飯とタレ】

 ご飯の美味しさ、タレの味付け・蒲焼とタレとの相性、薬味(山椒)の美味しさ

■評価員による総合評価討論会

■評価員のプロフィール紹介
●評価委員長

東京都江東区・亀戸『八べえ』 二代目 山﨑 裕八

亀戸神社前に店を構える鰻店二代目店主、鰻の世界に入って25年

https://hachibee.jp

●評価員

東京都文京区・春日『わたべ』 渡部 善隆

https://unagiyawatabe.com

横浜市鶴見区・駒岡『鰻々亭』 長谷川 みゆき

https://r.goope.jp/manmantei

[写真5:評価員3名、長谷川みゆき(左)、山﨑裕八(中央)、渡部善隆(右)]

●実行委員会が監修してマイナビ学生の窓口の「ガクラボ」所属の大学生3名が2025年夏に実施しました牛丼チェーン3社のうな丼食べ比べも、食のブラインドテストとして参考になりますから、ぜひ御覧下さい。
https://gakumado.mynavi.jp/gmd/articles/80599

※補足事項

大手外食チェーンはブランド名や業態の違う飲食チェーンを展開しており、例えば『ガスト』を運営しているすかいらーくホールディングスでは、傘下のファミリーレストラン『ジョナサン』でも「うな丼」が提供され、『すき家』を運営するゼンショーホールディングスには和風ファストフードチェーンの『なか卯』や和食専門レストランチェーン『華屋与兵衛』に、回転寿司チェーン『はま寿司』でも「うな丼」をメニュー化しています。

飲食ブロンド名は異なっても経営母体が同じで、原産地が同じ鰻であれば、同じ「うな丼」として捉え、外食チェーンのうな丼チェック実行委員会では考察しており、2025年までは評価の対象には入れていません。


※ちょっとお得な参考情報
■毎年土用の丑の日の当日は、うな丼の注文が殺到するため、外食チェーン各社では前日までの予約購入を推奨しています。
外食チェーンによっては丑の日期間中の事前予約では、事前決済での値引きや割引クーポン券が利用できるなどの特典が用意されていたりします。チェーンによって割引の条件や金額には違いがありますので、購入予定の外食チェーンのサイトや店舗で御確認下さい。


<2025年7月19日[土]の土用の丑の日に、うな丼(うな重)を提供している大手外食チェーンリスト>
 [牛丼チェーン]
  すき家(なか卯と同じゼンショーHD)
  松屋
  吉野家

 [回転寿司チェーン]
  くら寿司
  元気寿司(同系列「魚べい」)
  はま寿し(ゼンショーHD、7/18・7/19限定販売)

 [ファミレス・和食チェーン]
  ガスト(すかいらーくHDの系列は別途記載)
  ジョイフル
  華屋与兵衛(ゼンショーHDの系列は別途記載)
  和食さと
  
 [定食と丼チェーン]  
  なか卯(すき家と同じゼンショーHD)
  天丼てんや
  やよい軒(Hotto Mottoと同系列)
  大戸屋(限定1万食)
  宮本むなし

 [持ち帰り弁当チェーン]
  Hotto Motto
  オリジン弁当(キッチンオリジンと同系列)
  丼丸(店舗によってメニュー化)
  魚丼

 [宅配専門チェーン]
  釜寅(銀のさらと同じライドオンエクスプレスホールディングス)
  銀のさら

 [海鮮居酒屋系チェーン]
  磯丸水産

 [立ち食い蕎麦チェーン]
  ゆで太郎
  名代富士そば(一部店舗)

 [麺類チェーン]
  和食麺処サガミ

 [鰻専門チェーン]
  名代宇奈とと
  鰻の成瀬
  うなぎ乃助

<2025年7月19日[土]の土用の丑の日に、うなぎが食べられるメニューがある外食チェーンリスト>
 ロイヤルホスト(ファミレス)  「うなぎとたまごのピラフ仕立て」「洋風うなぎご飯」「うなぎとケールのオープンオムレツ」等
 ロッテリア(バーガーチェーン) 「うな丼バーガー」
 かつや(とんかつ専門チェーン) 「うなぎの蒲焼きとロースカツの合い盛り丼」
 からやま(からあげチェーン)  「鰻からたま丼」

●系列の補足事項
 ◎すかいらーくホールディングス
  ①ガスト
  ②ジョナサン
  ③夢庵
  ④藍屋
  ⑤魚屋路
  ⑥chawan
  ⑦から好し
  ⑧八郎そば
  ⑨資さんうどん

 ◎ゼンショーホールディングス
  ①すき家
  ②なか卯
  ③はま寿し
  ④華屋与兵衛(期間限定販売)
  ⑤COCO’S(「うな丼」期間限定メニュー)